ソプラノサックスという楽器
十数年演奏しているサックスプレイヤーならソプラノサックスを持っている人はかなりいるはずなのだけれど、現場でお目にかかることはまずありません、それはなぜか?
自分としてはテナーと同等かそれ以上使う機会が多いのがソプラノサックス。理由は持ち運びに便利だから…というのもありますが、今ではテナーと同じくらいストレスなく吹けるようになったからというのが一番の理由。この楽器、フルート等軽快な音色の楽器が吹けない自分にとっては、テナーでは表現できない曲想の時非常に重宝します。テナーの音が極端に重い自分はボサノバとかでテナーが合わない時、ジャズ的なフレーズがしっくりこないモーダルな曲など、そういう時のソプラノ頼み。しかしながら今、福山界隈で他の人がライブで演奏しているのはまずお目にかかることがございません、何でか?そのあたりソプラノサックスの難しさについて深堀りしてみようと思います。
一般的に使われるサックス属の中で最も高い音の出るソプラノサックス、アルト・テナーとは一線を画した独特な音色に「ソプラノサックスの音すきなんですよねぇ」と声かけられることしばしばあります。しかしながら最も難しいサックスともいわれ、プロは別にしてアマチュア界ではほとんどライブ等でお目にかからないのも事実。ビッグバンドのサックスプレイヤーが持ち替えで並べてたりするけど、あれは「こんな楽器も持ってますよー」自慢なので、本当の意味で楽器を吹きこなしてる人は少ない。実際譜面書き換えてメイン楽器で吹いたほうがいいんじゃ?みたいな人も多いです(言わないけど)
とはいえ自分にしても、人前で演奏して失礼にならないと思えるくらい吹けるようになるまでに、20年近くかかってるかもしれない。それくらい難しい楽器ではある。
じゃあなぜ難しいかというと、これは楽器が小さいということに尽きる。弦楽器に例えるなら、コントラバスの低音とバイオリンの高音では半音動かすのに前者は数センチ、後者だとほんの数ミリ。どっちがシビアなコントロールを要求されるかは一目瞭然。サックスの場合、リードに一定の圧をかけて開きを固定するので安定しない人は全く音程が取れません。テナーだと楽器の大きさゆえごまかしがきくけどソプラノはそれを全く許してくれない。
2つめの要因は、ソプラノサックスに適応する奏法で吹けていない点。息の量とスピード、テナーアルトでいい音出してる人でも同じ感覚で取り組むとまず無理。明らかにエアの通り道が小さいので太い息だとロスが多く(これが体に跳ね返ってくる吹奏感の抵抗となって、しんどいしピッチも下がる)小さい穴に速く細い空気を通すイメージが大切なんですが、あくまでもイメージなのでなかなかそうはなりにくいです(サックスの音色、体の中の見えない部分の使い方で大部分決まるのですが、他人に説明するのが非常に難しい。道具に走る前にそこ、改善しないと意味ないんですがそっちに行っちゃう人のなんと多いことか)
正しい奏法が(おなかの支えと口の形)できていれば、実はソプラノといえピッチは案外とれるもんです。楽器の設計上マウスピースはかなり深く差した状態で、各トーンホールとの整合性が取れるように作ってある。上級者になるほど深く差すようになるはずです(自分の場合ほぼ差込める限界に近いくらい)。しかしいい音に到達してない人は、音色をまとめるためにだいたいリードを噛んで合わせてしまう。そうすると音程が上ずるので基準音A440で既にマウスピースを相当抜かなきゃ合わない。極端な話ですが仮に1cm抜くならAの音より上、1cm大きい楽器になってしまっているので高音になればなるほどトーンホールの位置が下にずれてることになる。するとより嚙みついてピッチ合わせるので音量は出ないし細い音に。逆に低音はあと2~3cm楽器が長くないといけないのに穴の位置はそのまま。今度は上ずってくるのでアンブッシャを緩めて間の抜けた音しか出なくなる。
ソプラノサックスって音量が出ない楽器と認識されることが多いけど大きな間違いと思う。ちゃんと吹けない人がコントロール性を重視して、とか言い訳してクラシックのマウスピースを使うからじゃ?そもそもコントロールできない人がコントロール性云々ってなんなん?って話。ソプラノだけは音色に個性を持たせない人が多いのも不満。はっきり言ってこれ、音量はテナーほどの爆音は出ないにしても、それを補う1オクターブ上の音域で勝負できるので同等のボリューム感は十分出るし、負けてないと思うけど。吹奏感にしてもわかってくると相当スコーンと入るようになるので気持ちいいですよ。
正しく吹けるようになればショーターやリーブマンのような突き抜ける音量音質が手に入るはず。ライブハウスの空気を切り裂く感じ、楽しいですよー。
今使ってるのはセルマーのシリーズ2のシルバープレート。テナーだと我慢できないけどソプラノはシルバー大好き。柔らかくダーク、かつ高音がキラキラする感じ。欠点は重いこと、自分の美学的にストラップは絶対したくないので長時間だと親指が死ぬ(テナーもかたき討ちみたいなタスキのやつとか鼓笛隊の太鼓ホルダーみたいなので吹くんだったらラッパに転向するわ)
マウスピースはテナー以上に変遷したけど今はゴッツの響ってメタルのやつ(内部形状はデュコフと同じハイバッフルのバレットチェンバー)10数年音程には悩まされてたけど、なぜかデュコフのメタルで開眼し、もう少し低音が吹きやすく開きも広めなのがいいと思っていたところ、アマゾンで見つけたバーゲンでゲットした一品。
クラシックでは禁じ手の音色の変化を意識しています。低音部はサブトーン中心のささやき声、1オクターブめまでの中音は猫の鳴き声、中高音は女性のファルセット、高音はシンセのリード音みたいな。一つの楽器の中で4つの音色が入れ替わり出てくる感じなので、速いフレーズだと不思議な感じが楽しい。
もっとソプラノ人口増えるといいな。アルトやテナーのプレイヤーで数十万もする持ち替え楽器を買おうというくらい吹ける人なら少しコツつかめば吹けるはずなんですよ。ソプラノサックスの話、備後界隈に2~3人は談義できる人現れないかな?
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