ムードテナー・演歌テナーの勧め
これできるようになると、セッションとかでも「上手ですね」じゃなくて「うまいですねぇ~!!」って言われるようになるよ。
先日、宗右衛門町ブルースというムード歌謡の名曲を取り上げたんですが、ジャズバラードと同じくらいムード歌謡のサックスは好き。
これ、洒落でやってみたわけではなくて本人たちはいたってまじめに取り組んでます。歌は、歌詞とメロディーから表情をどう付けていくかのいい勉強になるし。サックスに関してははジャズで必要な上級テクニックを全て網羅する奏法なので生半可な技術では到底無理。
具体的には艶っぽいフルトーン、エロいサブトーン、激情のグロートーンをベースにベンド、ビブラート、一音一音の抑揚とダイナミクス、リズムのタメ等…8小節ほどの間奏でもかなり上級のテクニックてんこ盛り。ひとつづつ説明していくと……。
1.良いフルトーンはどんな音楽でも必須ですがムード歌謡などは独特の艶っぽい音色があり、それはあのベルグラーセンでないと出しにくい(後日ラーセンの特集あげようと思ってます)。リンクメタル(これマウスピースの話ね)だと品がありすぎるので。実際当時のサウンド、ほぼラーセンの音です。サムテイラーしかり松本英彦さん、夜霧の松浦ヤスノブさん…。1度ギュッと圧縮されたものがブワッと広がる感じというか。
2.みんな大好きサブトーンは演歌サックスの真骨頂。倍音を消した音色にどれだけの息のノイズを含ませるかで表情が違ってくる。ちなみにマウスピースの中につまようじかマッチ棒で横棒作って風切り音でるようにするとものすごいサブトーンが出ます、常にサブトーンになるけど。
3.グロートーン。声を発しながら吹く奏法ですが、できない人も多い。自分の声質と出す音程で質感変わるので、あの人の音が出したいと思っても同じにはなりにくいですが、歪みの粗さはある程度コントロールできる。ギターのエフェクターをいろいろ試すみたいな感じでまろやかなオーバードライブから粗いディストーションまで吹き分けられると楽しい。
4.ベンド。歌の表現には大事な要素で半音下くらいからギュイーンとあげるロングベンドと発音時にほんの少し掛けるショートベンド。ショートベンドは下手にやるとホームセンターでかかってるダサいアルトサックスのしゃくりみたいになるので注意。ピッチ下げた時音色が変化しないように。
5.歌の表現に一番大切な要素。かなり大げさにダイナミクスは意識して。一音一音の音色変化,抑揚はもうセンスだけなので磨くしかないです。音が上がる瞬間ふっとエネルギー抜いてソフトな音色に変化させるとか(ベンドも関係してくる)
6.リズムのタメ。上手い人は無意識にやってることですが、譜面にできない譜割で演奏すること。ジャストのテンポを常に頭に流しながら前後に揺らすという高等テクニック。ジャズでもミディアム以下の曲だと絶対必要。アマチュアレベルでバラードがつまらない人はだいたいリズムがつまらない。
など、短い間奏でもいろんな技を使いまくる演歌サックス。追求していくとジャズのバラードが簡単に思えてくるような奥深さがあります。加えてロック系のサックスもうまくなる。要するにサックスで歌えるようになる訓練ですので。1曲でいいので演歌・ムード歌謡のサックスを研究してみるといいですよ。(クールファイブや夜霧よ今夜もありがとうなどおすすめ、アルトなら津軽海峡冬景色で決まり)
結局はサブちゃんや石川さゆりさんのような超絶歌の上手い人の歌いまわしをサックスで表現することに他ならないんですよね。
忘れてはいけないのが決して下品にならないように、どんなに感情乗せてもベン・ウェブスターのような品格漂う歌い方を常に意識して演りましょう。
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